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15.08.2019

転倒予防研究がアワードを受賞・オーストラリアの市民政策に貢献

スポーツ理学療法の研究をしていたジェニー・ヒューイット博士が居住型高齢者ケアの分野で活動を開始した際に気づいたことは、これらの分野で漸増式レジスタンストレーニングとリハビリテーションの重要性が十分な理解を得ていないこと、そのため主に機能維持に重点を置いてサービスを提供しているという現状でした。

臨床を通して博士が抱いた情熱と目標は、こうした状況を変えようというものでした。

博士は居住型高齢者ケア施設における利用者のケガ予防と管理のエビデンスとなる基礎を7年かけて築き上げました。「サンビーム・トライアル(高齢者ケアにおける体力とバランスのエクササイズ)」という大型プロジェクトに取り組み、このプロジェクトにはニューサウスウェールズ州とクイーンズランド州の高齢者ケア施設16ヶ所の平均年齢87歳(最高齢101歳)の居住者221人が参加しました。

この研究で参加者はソーシャルグループとエクササイズグループに分けられました。エクササイズグループは個々の漸増性レジスタンストレーニングプログラムとグループで実施されるバランスエクササイズを25週間・50時間実施し、その後6ヶ月の機能維持プログラムに取り組みました。

この研究成果では居住型高齢者ケア施設におけるレジスタンストレーニングに利点があるという明らかな証拠が示されました。研究の結果、転倒率は55%減少し、この効果によるオーストラリアの健康医療経済に関わるコスト節減の
予測額は年間1億2,000万ドル(日本円にしておよそ95億円)にも及んでいます。

この研究成果は、すでに様々な健康医療スタッフや高齢者ケアマネージャーの考え方にも影響を及ぼしています。こうした研究成果は高齢者ケア担当大臣(ケン・ワイアット)にも提示されており、高齢者ケアの資金繰り状況を現在見直している作業部会とも共有されています。

ヒューイット博士には、オーストラリア高齢者ケア施設の組織で彼女に寄せられた敬意を示すACSA Lifetime of Achievement賞(2018年)が授与されました。
ヒューイット博士は、居住型高齢者ケア施設の臨床理学療法士として、居住者の体力を改善し居住者がよりアクティブな生活に参加できるように適正エクササイズプログラムを実施することによって、どんなことが可能になるのかを提示し続けています。

ヒューイット博士の願いは、彼女の臨床・研究で得られたエビデンスによって、オーストラリア居住型高齢者ケア施設の資金援助理学療法サービスにレジスタンストレーニングとバランスエクササイズが組み込まれることです。

この研究のプロトコルと結果に関する完全な詳細は、以下で全文をご覧ください:

Hewitt J et al. (2018). Progressive Resistance and Balance Training for Falls Prevention in Long-Term Resi-dential Aged Care: A Cluster Randomized Trial of the Sunbeam Program. J Am Med Dir Assoc. Apr;19(4):361-369.